MAZRIの祭 2004

ミュージックビデオなど音楽映像を中心にエンタテイメント映像をプロデュースするMAZRI主催による『MAZRIの祭』第一弾が2004年5月2日に日比谷野外音楽堂にて開催された。

出演アーティストは、The Miceteeth、明星/Akeboshi、LOSALIOS、EGO- WRAPPIN'の4組。いずれも、MAZRIがミュージックビデオなど映像プロデュースを手がける、独自のスタンスを貫く個性派アーティストだ。馴染み深い最高のアーティストたちと最高のグルーヴ感を楽しむイベントを発信していこう、というもの。

16時すぎの開場とともに続々と席が埋まっていく。お囃子の演奏にあわせて、獅子舞が客席に登場。厄払いにとアタマを差し出す観客の頭を次々と噛む獅子舞パフォーマンスでお祭りが始まる。西日が程よく射す春の夕方とは行かず、逆に時間が経つにつれ、曇りがかっていく。

会場も温まりきっていない肌寒い天候の中、千葉社長が「HAPPY PEACE LOVE」のスローガンを抱えたTシャツでステージに登場。挨拶の締めにピース!の一言を…それに応えるかのように、会場からピースフルな温かい歓声と拍手が沸く中、SHOWの始まりだ。

まずは、大阪出身の10人組The Miceteeth。後に、当日のパフォーマンス映像がPVとなった「レモンの花が咲いていた」が響く。思えば、丁度どこかの家の庭先にレモンの花が咲く季節である。そんな清々しさを彷彿とさせるサウンドが、会場中の気になっていた肌寒さを追い払う。空は未だ明るいが、曇り具合とライティングのバランスが、緑に囲まれた都会のオアシスに、何かを呼び起こしそうな、夕方ならではの空間を創る。そんなタイミングで「霧の中」の演奏へと移る。辺りを見渡せば、いつしか皆が気持ちよく揺れている様子が…。この日のSHOWのミスティーなトーンの世界観が構築された一時だったのかもしれない。一番難しいトップバッターの座を見事に飾ってくれた。

2番手は、U.K.はリヴァプールを拠点に活動してきた明星/Akeboshi。MAZRIがPVをプロデュースした「Hey There」でいきなりトドメをさす。バイオリン、チェロといったストリングス隊も引き連れ、アイリッシュ・フォークを基盤にエレクトロ・ジャズなどをブレンドした幻想的な音楽と、うっすらと霧に包まれているかのような空模様がさらにミスティーさを増す空間を生む。ロック色の強い、1曲目も収録したミニ・アルバムのタイトル曲「Faerie Punks」やU.K.在住時のロングセラー「Wind」などを披露。独特な癒し系スタイルで観客を魅了した。

後半に入ると、ご存知、元Blankey Jet Cityのドラマー中村達也によるLOSALIOSの登場。ドラムがステージ前方のセンターにドッシリと構え、それを自由に操る名ドラマーの両サイドをギタリストとベーシストが固める。客席から観た、そのステージ上のインパクトだけで、まず、唖然を喰らう。そして、SHOWが始まれば、ジーパンに黒いTシャツ姿で楽器をひたすら全身全霊で叩き続けるフロントマンの姿が。まさにロックである。どんなに早い打ち込みのキックやスネア音でも発してしまう何でもできるドラムマシーンもかなわない、ワン・アンド・オンリーなビート感でオーラを放つ。その脇で、花柄のついた黒いチャイナドレス風なワンピースにロングブーツ姿で演奏するベース・プレイヤーが並行してグルーヴを刻む。そこにオーバーラップするギターのリズムといい、ちょうど夕方から夜に移り変わる時間帯であることも加味され、ドッとオ・ト・ナ感が増す。またステージ上の激しい熱気が、風に揺られて観客の中を舞い、ダイレクトにオーディエンスへ伝わり、誰もが圧倒されている様子が窺える。とにかく凄い、カリスマならではのハイボルテージなステージングを実感できるパフォーマンスとなった。

そして、お待ちかね、EGO WRAPPIN'の登場!2004年初のライヴ出演ということで観客のテンションも更に上昇!7インチ盤にもなり、アンセムの1つである「PARANOIA」に始まり、いきなり前半戦からEGOパワー炸裂。一斉に歓声がわく。ボーカル、中納良恵のCDクオリティな歌唱力に加え、独特のグルーヴでステージ上を舞う姿、さらに森雅樹を中心としたバンド勢の抜群な演奏力とクールな佇まいが観客をEGOワールドへと即座に吸い込んでいく。『Night Food』以来2年ぶりのアルバムを制作していたこともあり、ファンへ新曲もプレゼント。ドラマ『私立探偵 濱マイク』の主題歌でお馴染み「くちばしにチェリー」が鳴り響き、1時間弱のステージングもあっという間に終盤に。最後に、他の参加アーティスト達がステージに大集合。ボブ・マーリーの「Nice Time」を、陽気なカリプソ調にアレンジしたバージョンでセッションが始まる。実は、この曲、4月15日に他界されたばかりのロック・ステディ界のクイーン、故・フィリス・ディロンがカリプソ調にカバーをしているもの。彼女への敬意をあらわす、シンボリックな意味合いも含まれた演奏で、ジャンルに関係なく、ステージに集った出演者たちがひとつになる。そんなポジティヴなヴァイヴスに会場全体が笑顔で自然と体を揺らす、感動的な幕締めとなった。

2006.7.1

Archives